日本の店名全般 4
芸術・文芸関連
こちらの店名はいわゆる借用というタイプの名づけです。今までの型と違うのは食べ物の何も関係のない世界からの名づけです。芸術、文学が持つ普遍性、広がり、親しみやすさを利用するために付けられます。
また自分の好み、こだわりを打ち出した姿勢のためカフェ、喫茶店に多いものです。
そして、同じ店名は少なく、ひとつの郡、グループです。造語の余地が少なく、借音の利用が多い店名です。喫茶店、邪宗門のようにカリスマ店主に心酔し、同名の店を開く場合もありますが、・・・
音楽
音楽は喫茶店が名曲喫茶という分野で先んじていました。
昭和の始めにクラシックレコードを聴く喫茶店が開店。ジャズ、シャンソン、タンゴ、フォーク、歌声喫茶、そして現在のカラオケ喫茶へと続く音楽と喫茶店はとても深い関係があります。
初期は中野「クラシック」、神田「ショパン」同じく「ミロンガ」。現在下落合のカフェ・バッハは主人がバッハ好き。チェーン店「モーツァルト」。
曲は原宿(現在は学芸大学)の「平均律」、「レクイエム」。オペラ人気が90年代には盛り上がり、東京オペラシティが1999年に開設になっています。
グローバルダイニングの「ラ・ボエム」、「トゥーランドット」、「フィガロ(仏料理店のフィガロは新聞名)」、「クローチェエデリッイア」(伊料理 椿姫から) など。変わったところでは2003年オープン「アルバス」。雑誌サライによればモーツァルトのオペラ「イドメネオ」の脇役の名からだそうです。そんなにしられていないさらに主人公ではない名前の選択。
歌は戦後ロシア民謡が人気があり、「カチューシャ」「黒い瞳」「トロイカ」。赤いサラファンから「サラファン(ロシア料理)」、楽器の「バラライカ」が残っています。
歴史的に有名なのは1955年、西新宿開店「ともしび」。歌声喫茶の先駆けとして有名です。
1970年代の雄、ビートルズなんかは大量にあるように思います。「IMAGINE」、「伊眞泌(和食)」、「イエロー・サブマリン」、「ストロベリーフィールド」など。
ジャズは知識がないので「サヴォイ(ピッツァ)現在は別の店名へ変更」が確認。
関連語はホテルに人気は音楽の形式。ラプソディ(センチュリーファイアット)、ノクターン(プレジデント)、シンフォニー(ロイヤルパーク)。一般で人気はカノン、KANON、香音、ロンド(円舞曲)。ハーモニー(仏アルモニー)は料理の調和の意味を込めて多いです。
楽器は喫茶店「カスタネット」、「ヴィオロン」。太鼓は居酒屋に多く、お客が来店すると太鼓を叩く店もあるような。
絵画
カフェの始まりが画家のかたの仲間との交流の場を提供したいと想いが形になったものです。店名は絵画の関連はしていませんでした。
有名なのは京都の「フランソワ」。印象派ミレーからです。戦後はチェーン店の「ルノアール」、画廊喫茶として有名な「ルオー」、御茶ノ水「画廊喫茶ミロ」、日本橋「ボナール」、、銀座「モネ」、茅場町「ユトリロ」、銀座の「モナリザ」。モナリザは恵比寿の仏料理店もあります。
現代絵画の王者ピカソはフランス料理屋や焼肉屋、カフェに付けられています。吉祥寺の「ドス・ガトス(スペイン料理) 1992年開店」もピカソとその仲間が集った店からつけられているとのこと。
一般にはフランス系が多く、イタリアは近年゛ダヴィンチ、カフェ・ミケランジェロ位。ラファエロ(英語名ラファエルはありますが、天使のラファエルかも)やボッチェチエリとかチェリーニとか少し覚えにくく、発音しずらいからでしょう。
反体制美術運動のダダは子供の「駄々をこねる」からかも知れませんが、結構あります。日本の画家は「写楽」が頑張っています。あと北斎もすこしだけ。
本家のアートはチェーン店アートコーヒー。英語のアートが人気で仏語、伊語は少ないです。
美術周辺語はキャンバス、デッサン(仏料理)、墨絵、パレット、パステル、パステル亭、フレーム等。
映画
映画は洋画の普及によりカフェがその最初でしょう。シネマ、ハリウッドが初期のカフェの店名に見えます。
絵画、音楽、文学より大衆的人気が高く、広がりがあります。ただ、音楽や絵画よりも命は短いようです。
有名どころでは「ティファニーで朝食を」から仏料理の「ティファニー」、ジョン・フォードの「駅馬車」、「ペペ・ル・モコ」、「フルフル」、「シャレード」、「ペーパームーン」、「ボルサリーノ」、「グラン・ブルー」、その主人公の名「エンゾ」。
日本映画も頑張っていて、「羅生門」、「椿三十郎」。
今回、調べて気が付いたのは、ディズニーの影響の大きさです。初期の「バンビ」「ピノキオ」「ダンボ」、そして文学よりもアニメの「くまのプーさん」(1977年初上映ですが、2011年に再製作)、「不思議の国のアリス」から仏料理の「クィーン・アリス」が有名。そして、同じく仏料理「アラジン」。
演じる分野では古くからあるのは歌舞伎の「助六」和食の歌舞伎から出た蛇の目の項で書きましたが、主人公の助六も人気で最初は鮨屋からでしょう。店名は明治大正になってからのようで、鮨のセット(海苔巻きといなり)も助六と呼ばれています。
歌舞伎の名作を表す十八番もよく使われます。
新しいところでは2001年の「権八(西麻布)」(グローバルダイニング)でしょう。インテリアは市場か劇場か(HP)と評されています。
文芸 ⓢー(追加2019.2.23)
カリスマ店主が居た「邪宗門 国立市 1950年開店」は北原白秋の詩集名。店のオーナーがすきな作家、作品にこだわって選ばれる店名。(写真「荻窪邪宗門」)。
作家名より作品名が多く、なかなか、これがわかりにくいです。夏目漱石の「こころ」「草枕」宮沢賢治は愛好者多く「山猫珈琲店」「七つ森」、字を変えた「かに幸船」。
フランス文学は多く、有名なバー「ルパン」、フランス料理の「オー・バトー・イーブル」(ランボーの酔いどれ船)、ラブレーの「ブラッスリー・パンタグリュエル」、代官山の「ラブレー」、「シラノ・ド・ベルジュラック」、麻布十番のレ・ザンファンリーブル(ジャン・コクトーの恐るべき子供たち)
英米は今はチェーン店になった「壁の穴 渋谷 1963年」、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」から。
★壁の穴★
会社のHPに詳しく載っています。最初は共同経営者のアメリカ人、ブルーム氏が好きな作品だったのでしょう。1953年開店当時は「ホール・イン・ザ・ウォール」と原語の店名でしたが、1963年の和風スパのレストランの時、壁の穴の店名に。現在は恋人同士の障害になっていた壁が、壁の穴で障害を乗り越えて、心を通じ合わせる存在となったように、お客と交流を大切にしたいとなっています。(2014.7追加)
日本では江戸時代後期の蕎麦屋で百人一首を見たたて「小倉蕎麦」なるものも出現していました。和歌から採った店名もあるとは思いますが、知識不足のため見つけられません。京都の千花はそれにあたるとか。
ダイニングの萬葉庭はインテリアから料理までの万葉世界構築、万葉集から採った店名とは言い切れないものがあります。
日本の小説も泉鏡花「歌行燈」、「ビルマの竪琴」、「カフェらせん」等。「あすなろ」は井上靖の「あすなろ物語」からしられて店名に付けられることが多くなったのでしょう。だだ、現在は学習塾や自己研修セミナー関連もあって、あるホームページではその説教臭さが嫌で、信用できないとのご意見もあります。
これとは全く内容の違う漫画『あすなろ白書』は1993年にドラマ化。杉になろうあすなろうの翌檜は日本人の心根に沿っているイメージ何でしょう。
1971年の電話帳には20店以上の店名、字替えの「亜砂呂 九段下」洋菓子喫茶店もありました。現在の食べログでも200店近い名を全国でヒットできます。2017年から2018年も5店のオープン。1971年は喫茶店が多かったのですが、今も一番は喫茶店ですが、ラーメン、居酒屋、洋食等もそこそこあります。(2019.2.23追加)
浦島太郎は結末のせいで人気なく、竜宮があります。同じく、舌きり雀も雀の御宿、すずめのおやど(チェーン)の方があります。かぐや姫はかぐやもありますが、ダイニングの竹取百物語影響か竹取が多くなっています。
童話は宮澤賢治が人気が高く、「山猫珈琲店 明大前 1993年」、山猫亭、山猫軒やイーハトーボ、POLANO(ポラーノ)、「ゆりあぺむぺる 吉祥寺 1976年」、七つ森などです。
テレビでも放映されたムーミンも夢民というカレーがあり、その中にででくる「ニョロニョロ」の名「ハティフナット」というカフェも最近できています。水道橋にムーミンの世界を表現したムーミンベーカリもできています。この世界はいわゆるユルキャラの世界であります。
芸術・文芸関連の周りから
いつ頃からから、場所名の中にギャラリーとか工房の名が出できます。
調理する人々の中により高い創作物であるという想いがあるのでしょうね。実際、器を創作する店主もいます。
フランスにも同様の店名があるので、精神は共通なのですね。その精神性では宗教、哲学ですが、国名や地名と同じく、どこの国の料理かを表す役割が多いようです。
新しいタイプ。日本関連では自然の美しい風景を表す花鳥風月、(青山のダイニング、高円寺のカフェ2005-2011年)風姿花伝、わびさび庵、一期一会、いろいろ組合わせのできる禅から、しゃぶ禅、牛禅、ザ・ゼン等があります。
庶民的には浪漫。浪漫は18世紀中頃の文芸、芸術運動のロマン主義から来ていますが、形容詞化していて、食べもの屋以外の多くの業種へ広がっています。
禅、わびさび、花鳥風月等はフードビジネス会社が好む店名のようです。いわゆる「コンセプト」が作りやすい言葉だからです。
実際ザ・ゼン、わびさび庵はグラナダ、現在は仙台市のみの際コーポレーションの紅虎禅、しゃぶ禅はチェーン店、最近オープンしてカフェ、禅カフェは通販系のドーナツカフェとなっています。
もう一つの世界が美術や音楽、文芸を愛好すること。風流、風雅、粋の言葉はロマン同様、形容詞風の利用をされています。こちらも新しく、フードビジネスの世界で多いようです。ラーメン「風雅亭」、寿司「風雅」、旬味粋、酒処粋、味粋(居酒屋)。
風流の意味を持つ「花月」。現在、検索をすると「らあめん花月嵐」が大量に出できますが、有名なのは和食、料亭。神奈川県鶴見の遊園地「花月園」の創設者は新橋の有名料亭花月楼主人。明治初年創業とのこと。
日本人の好きな月と花を組合わせた店名。牛丼の吉野屋のように大手のチェーン店でイメージが出来上がってしまうのは寂しい限りです。
もう一つの傾向は男性は自分の生き方と同調する作品、作家を、女性はその作品世界へ夢を描いて選ぶようです。
男性店主の多いラーメンは「山頭火(俳人山頭火から1号店1988年旭川発ですが・・)東京店恵比寿1号店 1994年」、ラーメン屋武蔵(作家ではありませんが五輪書を書く)があります。他に江戸川乱歩好きの「コーヒー乱歩゜ 谷中 1987年頃」
女性はその作品世界を表現しやすいカフェ、喫茶店が多いです。
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