懲りずに、パート4に突入した。パート3から大分時間が経ったので、今度は『パルプ・フィクション』をレンタルして観た。実は、この映画のヒットのおかげで『キル・ビル』の一般的な前評判が高く、『キル・ビル』の残酷な描写に辟易した観客が多数いたと言う事なのだが、久しぶりに観る『パルプ・フィクション』もまた、残虐なことよ!本格的なアクションシーンは無いにしても、血の出る量は半端ではない。一体、この2作品の際立った違いとは、なんぞや?それは、実は簡単な事で、『パルプ・フィクション』は『レザボア・ドッグス』の流れを更に洗練した脚本の上で成り立っていて、『キル・ビル』は娯楽とおふざけをミックスした作品なのだ。だから、マスコミなどが『パルプ・フィクション』の上を行くアクション巨編!などと評価していたとしたら完全な間違いである。しかし、日本ではどうしても『パルプ・フィクション』の名前を借りて宣伝しなければならない所が辛い所。結局、柔軟な観客には受け入れられたが、そうでない人には辛かったに違いない。
さて、パート3の続きである!!「キリタイネジュミガ…」とブライドがのたまった後に、日本語セリフかみまくりの千葉先生は、屋根裏らしき部屋に彼女を案内する。無造作に扇風機までおいてあるその屋根裏部屋には彼の作品が展示してある。その作品こそ刀であり、初めて、彼が伝説の刀鍛冶であることが判明する…のだが、「はて?」ハットリハンゾウ(カタカナで書くと忍者ハットリ君のようだが)が刀鍛冶?ああ。まためちゃめちゃ偏った世界が繰り広げられているよ。最近ネットで発見した、タランティーノの脚本(もちろん、220ページ以上の大作だが、Volume 2にあたる所は見ない様にしている訳で…笑)に面白いセリフがある。"I wanted to show you these.... However someone as you, who knows so much must surely know, I no longer make instruments of death. I keep these here for their ascetic and sentimental value.
Yet proud tho I am of my life's work... I am retired. "

キル・ビル Kill Bill vol.1
2003年作品 MIRAMAX シネマスコープ 113分
製作 ローレンス・ベンダー
監督 クエンティン・タランティーノ
出演 ユマ・サーマン ルーシー・リュー ダリル・ハンナ 千葉真一(ソニー千葉)  栗山千明 ヴィヴィカ・A・フォックス 國村隼  ect.

けっこう長いセリフだが、もちろん千葉先生はこれを日本語で言うのである。「あなたにこれをお見せしたかった。…中略…でも、もう私は引退したのだ。」ここで、タンティーノが刀の事を『殺しの道具』と表現している所に注目!なんとも美しい響きではないか?実は、この『殺しの道具』という洒落た言葉はどうやらタラの観る時代劇などに付く英語字幕から引用した模様である。最後の決闘のシーンでも、オーレンがブライドの刀の切れ味の良さに嫉妬して"Your instrument is quite impressive!"と言う。日本語のニュアンスだと「なかなか良い道具(モノ)を持ってんじゃないのさ」と言う感じか。このセリフひとつ捉えても見ても、タランティーノがかなりの通であることが伺える。さて、昔の思い出に浸ってしんみりとしている千葉先生に、あろうことかブライドはいちゃもんをつけるのである。『斬らなきゃならないネジュミはあなたの弟子なんだから、師匠のあんたはそれなりに責任持たなきゃ仁義がとおんないわヨ!」てな、感じだろうか。初対面なのに、この大胆な切り口に普通はムカッとくるだろうが、窓に指でBillと書いてその場を去って行く半蔵。不貞の弟子を持つ身は辛いのだろうか?それにしても、何故、アルファベットの綴りなのにもったいぶって習字の様な字体で書いたのか?千葉先生の大袈裟な演技にこちらはすっかり空いた口が塞がらなかった…そして、一か月後、まるで沖縄らしくない場所で出来上がったばかりの新作ハットリハンゾウに最後のお浄めをする千葉先生とギャバン。先ほどのコントのような雰囲気はもう感じられない。それにしても沖縄に半蔵が身を隠す理由が、結局最後まで明かされる事はなかった。外の風景も皆無だったし(ハイ!それは沖縄でロケをしていないからです!)。その代わりに新作ハットリハンゾウにはメイド・イン・オキナワの証しとして、銘の部分にシーサーが彫られている。少し可愛いかも。さあ、これで好きな様に斬りたいネジュミを料理してやってちょうだい。武器も無事に手に入ったので、ブライドは再びエアー・オキナワで東京に向かうのであった。ここで、またジョークが!飛行機には刀剣が自由に持ち込みできるらしく、その上、カタナ・ホルダーまで完備されているのだ。一体ここはどこの世界なのだろう?このAir O(エアー・オキナワ)の飛行機が、タランティーノいわく、『吸血鬼ゴケミドロ 』に出てくる赤い夕焼けの中で、飛ぶシーンは(そんな細かな設定をされても戸惑うばかりなのだが)なんと!飛行機の模型(全くの模型然とした飛行機)を吊るワイヤーが大画面を通してマル見えなのだ。初め、「これは、撮影のミスか?」と思ったのだが、二回目の鑑賞である事実を確信した。これも、わざわざそうさせているのだと(やれやれ…)これこそ、70年〜80年代の東宝特撮映画へのリスペクトなのだ。さらにそのリスペクト度は、東京の上空(これも模型)を飛ぶシーンで最高潮に達する。後に、雑誌に掲載された記事によると、この東京上空のシーンは模型を東宝撮影所で近年のゴジラ映画で使われたセットの二次利用だと言う事で、撮影自体も東宝で行われたそうである。よく見ると、今は名前が変わってしまった名物看板の「ワールド」の字が読める。しかし、更によく見ると、タランティーノ映画でお馴染みのレッド・アップル・ブランドのタバコと、この映画の為に作られたオリジナル飲料(天空ビール)の看板も付け加えられている。その看板に映る女性は何を隠そう、この後で腕を斬られて血がどぴゅーっ!のフランス人女優、ジュリー・ドレフュス なのである。どうせ、映画では見えないからと使ってしまうこのセコさがまた、タランティーノの凄い所?かもしれない。
さて、東京につくなりKAWASAKIのバイクで黄色いトラックスーツと何かと黄色尽くしのブライドが、東京の名所を巡る巡る…まずは、台場のレインボーブリッジ。それから、新宿東口のドンキホーテの前で顔を見せる事もなく走り抜けてゆく。彼女がバイクで並走するのがジュリー・ドレフュス の運転するフェアレディZなのだ。ジュリー・ドレフュス の演じるソフィ・ファタールは日本語が堪能なフランス人弁護士で、車を運転しながらも日本語で楽しそうに携帯で話をしている。同時に、GoGo夕張役の栗山千明 が運転するベンツ(年齢設定は17歳のはずでは??)で護衛のクレイジー88のバイク集団を引き連れたオーレン・イシイの姿が映し出される。その時にかかるBGMが、『グリーン・ホーネット』のテーマ曲である。ハイッ!この一連のシーンこそ、ブルース・リーへのマキシマム・リスペクトのコーナーなのだ。とあからさまに物語っているが、もうリスペクトはどうでも良くなってきた。それでも、このシーンは音楽に併せて、適度なモンタージュカットが心地良いので、そのまま流れて観てしまうのだ。ちなみに、雑誌にも掲載していなかった事実をひとつ。ジュリー・ドレフュス が運転するフェアレディーZがお台場の名前があるトンネル前の赤信号で停車するシーンがあるが、このトンネルは、その形状からして『ターミネーター』や『インディペンデンス・デー』でお馴染みのロサンゼルス・ダウンタウンにあるトンネルである。多分、追撮か日本でのロケが不可能だったので東京にみたてて撮影したのであろう。そんな虚構もこの映画だから許されるのかな。取りあえず、今回はここまでで筆を置く。パート5に堂々続く!!しかし、その前に『遂に解明!日本版とアメリカ版キルビルの違いと検証』を急遽掲載する。そしてその後で、青葉屋とヤッチマイナの実態に迫る予定である!これは来年になりそうだ*
 
 
 
 
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