シネラマ方式とは

アメリカの映画クラスで使う教科書に掲載される図解で説明すると『シネラマ』上映方式は非常に面倒な仕組みである。自分は残念ながら実演の体験が無いのだが、パノラマサイズを得るために三台のカメラが同時に廻され、上映する際には各カメラのフィルムが同期する方式を撮った。そのためにスクリーンを湾曲にせざるを得なかった訳である。映写機Aが投影している部分はスクリーン右端の1/3のパートを担当しているのである。また、音響は各フィルムのトラックを利用して前面5チャンネル背後に2チャンネルの合計7チャンネルが実現出来た。1952年の『これがシネラマだ』の登場で観客は比率が1対2.88というとてつも無くワイド画面の世界に酔いしれる事になる。

実際にシネラマの画面比率(これは1対2.66)を観て欲しい。1952年にアメリカで公開された『これがシネラマだ』は、今の『IMAX』シアターのようにフィルムの魅力そのものを観客に紹介するために作られたドキュメント映画で、ローラーコースターにカメラを載せて疑似体験させたり、世界の有名景色の上空画面など様々演出により観客に体感させるアトラクションの様な映画であった。劇映画としてはその後1961年に『西部開拓史』が作られたが、撮影自体は三台のレンズとフィルムリールが一体化した馬鹿でかいカメラを操作する事が不可能だったために、当時最大のフィルムであった65mmフィルムでワイドに撮影して、後で三台の映写機に分割して上映するという『スーパー・シネラマ方式』が採用された。

上のカットが『西部開拓史』のスクリーンサイズ(1対2.85)である。こんなに広いスクリーンを上映するのには当然特別に設計された映画館が必要である。右の写真にあるのが劇場の一例である。スクリーンのある前方はカーテンで囲まれそれが開かれた時に観客はその画面の広さに圧倒される。

実は世界に作られた専用劇場を調べてみると、なんと名古屋にあった『中日シネラマ劇場』(1999年9月24日に閉館したシネプラザ1)は、ニューヨーク・ロサンゼルスに続けて、アメリカ本社が設計した本格的なシネラマ劇場、しかもスクリーンサイズも幅11m、高さ30mと世界一を誇っていたということだ。シネラマ上映も(スーパー・シネラマ上映であったが)1990年の『アビス』まで行われていたという記録もある。更に、1999年の閉館までスクリーンは湾曲のままで、各スクリーンサイズが

ビスタサイズ 幅12.45m 高さ7.5m
シネマスコープサイズ 幅17.7m 高さ7.5m
70mmパナビジョン 幅25.4m 高さ9.4m
シネラマサイズ 幅30m 高さ11m

かなり大きい。ちなみに、現在の『新宿プラザ』は、幅17.4m 高さ7.4mと都内では随一の大きさをまだ誇れる映画館である。next