さて、ついに最終編である。今日までに映画は都合2回観たのだが、結局、『映画秘宝』の「キル・ビル」元ネタバラシ大会みたいな、超アングライベントに参加したおかげで、もう何度も観た気分になっている。ここで改めて、クエンティン・タランティーノに言いたい。「アンタ!ホントに羨ましいよ(笑)。大金使って好きな事をさせてもらえて…」 冷静に考えると、「キル・ビル」は、まるで映像のサンプリング+リミックスのような映画である。そう言う意味では新しいかもしれないが、内容も映像も全然新しくない(汗)だから、絶賛はしつつも、決して名作ではないのだ。 さて、本編はミラマックスのクレジット直後から、いきなり暴走する。突然シネスコ画面に現れた、虹色の汚いフィルムに「SB」のロゴと妖しい中国語の文字…唖然としていると、「フィーチャー・プレゼンテーション」の文字が登場。やっとこれから映画が始まりますよ〜という合図である。これで、70年代香港映画界を牛耳っていたショウブラザース映画会社への敬意を表したらしいのだが、観客の99%は理解不能…それから、瀕死のブライド(ユマ・サーマン)に「俺はサドか?」と問掛けながら、結局非常にも彼女の頭を撃つビル。その音がまた大きな銃声で初めに劇場で観て『ビクッ!』としてしまった。しかし、ビルは声はするが、決して姿は見せない。予告編で散々顔出ししているくせに、volume 1では『手』か『刀』か『ハンカチ』しか出てこない。だったら、徹底的に隠し手も良かったのにと思うのは自分だけなのだろうか。とにかく、かなりの極悪非道な奴らしい…そんなビルの「俺はサドか?」のバックにかかるのは、ナンシー・シナトラの「バンバン」。なかなかの名曲である。もちろん非有名曲である(笑) さて、ここで舞台はアメリカのパサデナに移る。ここは、ロス |
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キル・ビル
Kill Bill vol.1 2003年作品 MIRAMAX シネマスコープ 113分 製作 ローレンス・ベンダー 監督 クエンティン・タランティーノ 出演 ユマ・サーマン ルーシー・リュー ダリル・ハンナ 千葉真一(ソニー千葉) 栗山千明 ヴィヴィカ・A・フォックス 國村隼 ect. |
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郊外の閑静な住宅地である。この地域は、本当に良い所で自分もロスに在住時に、この地域に住んでみたかったのだが、結局海側に住む事になりいつの間にか日本に帰って来てしまった。そんな住宅街へブライドの乗る「プッシーワゴン」が到着する。すでに、ブライドが頭を撃たれながらも生き存えて4年以上の月日が流れていた。家のチャイムを鳴らして、宿敵「ヴァニタ・グリーン」が登場するなり、「ジャンジャジャッジャ。ジャッジャーン!」と昔のテレビ番組「ウィークエンダー」のテーマ曲が流れて、ブライドの復讐に満ちた顔のアップが赤っぽくなりフリーズする。この曲がここで流れる理由は、タランティーノによれば、1972年のショウ・ブラザース映画「キングボクサー/大逆転」で主人公のロー・リエが怒りが頂点に達した時に画面が赤くなりこの曲が流れる所からアイデアをもらったと言う事だ(映画秘宝のイベントより)。…ってそんなこと、分かるわけないじゃん。日本人なら、昭和50年生まれ位までならかろうじて「ウィークエンダー」の曲かな?って思うかもしれないけれども、それも関係ないよ〜って言われてもねぇ。タランティーノの意図が分かるのは、一体地球上で何人いるのだろうか…だいたいその香港映画のビデオさえ見つけるのも困難だと言うのに… 冒頭からそんな調子で始まる「キル・ビル」だが、このままこと細かに検証すると長文過ぎて、これが最終章にならなくなってしまうので、ここからは急ピッチで話を進める事にする(笑)。詳細は、『映画秘宝』を読むかして欲しい。色々検証して調べた事を書いても、結局『映画秘宝』の受け売り状態になりかねないので。 さて、 4歳の娘の前で母親のヴァニタ・グリーンを殺してしまったブライドは(本名は何故か「ピー」という音が入って分からなくしてある)車にもどって「デス・リスト」ノートの2番目にあるヴァニタ・グリーンの名前に線を引く。ここで注目する部分は、一番目のオーレン石井はすでに日本で殺害してきたという事実。この映画では、オーレンとの決闘が最後に持ち越されているのだが、時間軸ではオーレンの方が先。つまり、ブライドは、4年の昏睡状態から醒めてまず、日本に行き服部半蔵と出会い、名刀『ハットリ・ハンゾウ』を手にしてから東京にてオーレンと決闘してからアメリカでヴァニタを殺害したことになる。これが、タランティーノが得意とする時間軸の遊びである。しかし、実はもうひとつ付け加えられる部分があって、日本で刀を手にしてオーレンを殺した後、ブライドは中国に渡り、伝説のパイ・メイにカンフーの秘技を伝授してもらうようだ。この部分はなんとvolume 2で語られるのだから、彼女の行動を正しい時間軸に振り分ける事はvolume 1だけでは不可能である。やっぱりタンティーノって変な奴(笑) ヴァニタ・グリーンを殺した後、「復讐とは…」という千葉真一の日本語ナレーションが入る。海老名でも六本木でもこの千葉真一の長い日本語の講釈じみたナレーションに英語字幕は入らないので外人の客はかなり困惑したと思う。しかし実際に困惑したのは英語圏の客だけではなかった。ここまで目にも止まらぬ速さのアクションで切れが良かった映画が一瞬にして千葉真一の訳の分からない日本語により「デート系」の客層がほぼ全て引いてしまったのである。 自分も実はちょっと引いてしまったが、ここは監督の意図では笑って欲しい所のようだ。だから二回目の鑑賞では大笑いをした(やれやれ)。 これで、初めて彼女が何故蘇ったのか、復讐に走る事になったかが明かされる。ブライドは頭を撃たれ死亡したと思われていたが、何故かしぶとく生きていた。病院でも昏睡状態ながら外見では傷が分からない程になっていた。そこへ、最強最悪の女殺し屋エル・ドライバーが現れる。口笛を吹きながらの登場はさすがにウェスタン風な感じであるが、ここで彼女が吹いていた曲が問題なのだ。この曲は「サイコ」や「タクシー・ドライバー」の曲で有名なバーナード・ハーマン作曲の「密室の恐怖実験」という1968年のイギリス映画のテーマ曲がそのまま使われているのだがこの映画って「恐怖 奇形人間」のように、酷い差別映画で現在放送禁止、発売も禁止されている問題作なのだ。タランティーノはそんな超マニアックな映画のテーマ曲を堂々と使っている(もちろん許可は得ているが)そしてまたこのエル・ドライバーが眼帯の殺し屋を演じているのだがこの元ネタも、スウェーデンのハードコアポルノ「They call her one eye」の主人公のキャラクターのファッションだと言うから驚き(映画秘宝のイベントより)この映画は倫理感が皆無のZ級映画で、恐怖映画でもタブーのシーンも盛り込まれている(やれやれ)。もちろん、世界的にも発禁の映画である。こんな抹殺された映画を元ネタしてしていることが、タランティーノの恐ろしいビデオコレクションが伺い知れるのである。でも、「密室の恐怖実験」(原題"Twisted Nerve")の曲は名曲だと思う。ストーリーとは関係なく良い音楽を引っ張ってくるタランティーノにはホントに驚かされる。やはり長くなってしまったので(泣)Volume 3 partIIIに続くことにする…
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