さて、このページで初めてネタバレ満載(笑)の批評を書く事になるのだが、ここまでVolume 1から2へとすでに映画を観てから書いていたので自分がいかにこの映画をケッサクと思ったかご理解していただけたと思う。しかし、この映画は決して一般的な客層に受け入れられる代物ではない。一応、ハリウッド女優が主演し、ハリウッド資本により作られた、まごうかたなきアメリカ映画であるのだが、実際ふたを開けてみれば、ハリウッド映画ならぬ「タランティーノ映画」なのだ。この「タランティーノ映画」というジャンルは一口で言えば、バイオレンス!クエンティン・タランティーノと言う人物は、尊敬する映画人はすべて、バイオレンス映画の監督であり出演者であるのだ。だから、彼の作品や出演作(実は俳優でもある)はラブロマンス映画、分かりやすく言えば「デート向き」な映画であろうはずも無い。映画の観客層の区分において、一般的には次の3つに区分されるが、(デート系・ヲタク系・文芸系)その中で考察すると、「キル・ビル」の客層で、観終わった後に「オモシロカッタ〜♪」と思うのは、決して『デート系』では無いと思う。今、ヴァージンシネマに行くと、映画が始まる前に「映画はデートの要素としてとても有効だ」などと謳い文句が流れるのだが、相手の事も良く知らないでこの映画が初のデートだとしたら、それは大失敗に終わる可能性が非常に高いのだ。しかし、それだからといって劇場にカップルがいない事は無く、年代も含めて多種多様な観客で劇場は埋め尽くされているのだ。しかし、日本の興行を仕切っているGAGA・HUMAXは、やはり「デート系」に一番アピールするように宣伝にはひときわ力を入れたおかげで、普通に「S.W.A.T.」や「トゥームレイダー2」等と並んだ普通のアクション映画のように見えてしまったが、実は『ヲタク系』が喜んで観に行く「フレディVSジェイソン」(これは褒め言葉である!)と同じな突飛なジャンル映画なのだ。だからかもしれないが、始まって30分程で始まるブライドとヴァニータ・グリーンのナイフでの死闘で「私。恐いからもう帰る」と彼女に席を立たれてしまったカップルのちらほらいた訳で、こんなカップルは決して「『フレディVSジェイソン』を観に行こうぜぇ!」などと、一生言う事もなさそうな人達だから、「ユマ・サーマンがなんかカッコイイ感じのアクション映画だから観てみる?」と軽い気持ちで観始めたつもりが、流血とアクションのリアリティー度に仰天し、我慢をしていたがついに、病院のシーンまたは、アニメーションのシーンで出て行く決心を付け、『青葉屋』の流血シーンでは、すでに手遅れな面持ちでこっそりと(げんなりとして)劇場を後にする。また、映画の迫力に圧倒されるは良いが、怖くて身が凍り付いて結局最後のクレジットで『怨み節』が流れ終わって「Volume.2来年公開」のような表記にあっけにとらわれて、でも「もうどうでもいいや」と捨て台詞を吐き、すごすごと退場するのだ。 | ||||
キル・ビル
Kill Bill vol.1 2003年作品 MIRAMAX シネマスコープ 113分 製作 ローレンス・ベンダー 監督 クエンティン・タランティーノ 出演 ユマ・サーマン ルーシー・リュー ダリル・ハンナ 千葉真一(ソニー千葉) 栗山千明 ヴィヴィカ・A・フォックス 國村隼 ect. |
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そんな可愛そうな目にあった「デート系」を後目に、「ヲタク系」とひょっとして「文芸系」(アートシネマ・単館上映の作品やヨーロッパ映画を好んでみる人種)の皆様はこぞって、やんや・やんや♪の大騒ぎである。この映画が公開された初日の10月25日は、海老名のヴァージンシネマに足を運んだ。ここを選んだ理由は2つある。まず、首都圏で一番大きなスクリーンの劇場で音量・音質にも定評のTHXシステムが設置されている映画館であること。それから、夜の回は1200円で観られるからである。しかし、そんなチープでゴージャスな映画館に集まるのはまさに「デート系」と呼ばれるカップルであったから、上映中、本当に「退場した」人が結構いた(汗)。しかも、上映中始終シーンと静まり返り、残酷だが笑えるシーンが満載のこの映画を観ながら、困った事に自分の笑い声が悲しくも響き渡ってしまった。 そして、驚く様な事が「え?この映画ってここで終わり?」とか「あれ、来年続きがあるの?」と言う声が混じりながらエンドクレジットの『怨み節』を聞いて尚更、劇場内はざわついている。「なるほど、これが賛否両論と呼ばれる作品のあるべき姿なのかな。」と一人で納得してしまった。同時に、同じ映像に携わる人間として、自分の思う通りの映画を巨額な予算で作れる様になったタランティーノに嫉妬さえ憶えてしまった。もし、自分がこの映画に出会った歳が12歳〜15歳の間だったらと色々想像してみた。一応、R-15のレイティング(当たり前だが)がついていたが、多分あらゆる手を使ってもこの映画を観に行ったであろうし、この映画が映画好きな少年に与える影響は測り知れないものがあるだろう。「いつか自分もこんなかっちょいい映画を作ったる〜!」と拳を握りしめているに違いない。実際、この映画の編集は切れが良い。映画は虚構であるが故に編集で、栗山千明のとろ〜いアクションも素早く魅せているし(これは決して栗山千明をけなしているわけでは無い)、日本映画を知り尽くしたファンも納得するカメラアングルや間の持たせ方など、クリエーターなら、見逃してはいけない要素が満載なのだ。アニメーションももはや、アートワークに匹敵する。オーレン石井がスナイパー時代に某国大臣を暗殺するシーンでは、なんと彼女の撃った弾丸の主観ショットが登場し、これぞアニメーションだから表現出来たカットであるが、これもタランティーノらしいと言えば彼らしいショットだと思う。彼の頭脳にしまいこまれたぐちゃぐちゃで突飛なアイデアも日本人の協力で見事に映像化されている点を発見するだけでもこの映画を観る価値があると思う。 さて、初日に、ある意味カルチャーショックを受けつつも、すっかり「キル・ビル」の世界にハマった自分である。当然、もう一度(もう何度でも)映画館に足を運ぶ決心はついていた。もちろん、映画の批評もこれまでにない長さで書くつもりでいた。少なくともいつもの様に映画を観たその日に書くには余りにも内容が濃すぎたというのもあるが… 次の劇場鑑賞は、平日夜にやってきた。会場は今一番のデートスポットである「ヴァージンシネマ六本木ヒルズ」である。ここを選んだ理由は2つある。一つは、やはり都内で一番大きなスクリーンを持つ(スクリーン7は会場が652席スクリーン・サイズは20.2m x 8.4m!これはでかい!)音響も最高の映画館だったということ。もう一つは仕事場の真ん前だったからという安易な話(笑)まあ、そんな所だがちょっと驚いた事がある。なんと、全くの平日にも関わらず上映の一時間前で既に後ろの列の端の席しか開いていなかったこと…実際、映画が始まったら652席はほぼ埋まっていた。さすが、眠らぬ街六本木である。そして更に驚いたのは観客層が海老名と違って平均年齢が高いこと。映画が始まって更に驚いたのは、あれほどシーンと静まり返っていた海老名と違って、終始爆笑の渦に囲まれていたと言う事。残酷なシーンをポップコーンをほおばりながら笑う。これぞまさにタランティーノの意図する映画鑑賞の在り方なのだが、この劇場では「デート系」よりも「ヲタク系」「文芸系」の占める割合が多かった事が伺い知る事が出来る。少なくとも、初日よりも優秀な観客層により自分も周りを気にせず映画に堪能出来た。だからこそ、初回で気が付かなかった部分が補強出来た。 それでは、早速検証に入ろう。Volume.3 PartIIへ続く(ごめん) |
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