その噂を最初に聞いたのは20世紀も終わろうとしていた2000年の年末であった(多分)。『映画秘宝』の小さな記事で『ついにタランティーノがソニー千葉と映画を作る』と言った本気かジョークか分からないような見出しのニュースであった。まだ内容は分からないがとにかく無理矢理でも千葉真一をリスペクトした映画を作るということだ。まさか、主演は無理だろうと思っていたらそれから2年後についにその全貌が明かされた。いつもの様にアップルのサイトにてアメリカ映画の予告篇をストリーミングして鑑賞していた矢先、「Kill Bill」という怪しげなタイトルの予告篇を見つけた(サイトはこちら)これはいわゆる『特報』英語ではTEASERと呼ばれる予告篇で映画の公開一年前から発表される事が多い。そしてこの予告篇もそれほど前からネット上で流れ始めたのだ。タイトルに惹かれてダウンロードしてびっくりした。まさに、ニュースにあった映画が現実化したからだ。しかも、千葉真一はおろか、「バトルロワイヤル」に出演した栗山千明が、そのままの格好で出演しているし、更に、その当時あまり良く知らなかった『チャーリーズ・エンジェル』のルーシー・リューが思いきり日本の着物を着てこれまた怪しげな日本語で「ヤッッチマイナ!」と叫んでいる。途中に入るアクションでは昔のカンフー映画で良く見かける中国老人(マスター風)と主演のユマ・サーマンが竹やぶでカンフーの秘技を伝授しているシーン(白髭がこれまたインチキ臭いのだ)があり、刀を持った黒マスクと黒スーツの男女と何故か『死亡遊戯』のブルース・リーを彷佛とさせる黄色のトラックスーツを着たユマなど、色々な要素が有り過ぎて(一年前の予告篇なのに)頭の整理が必要になるほどだった。しかし、トータルで言えるのは、カッコイイに尽きるのだ。音楽もセンスもどこかしらカッコいい特にディストーションばりばり聞かせたギターサウンドのテーマ曲らしき音楽に震えが出る程だった。これが布袋寅泰の曲だと知るのはまだ後の事である(すっかりオリジナルだと思ってたので…絶句した)

キル・ビル Kill Bill vol.1
2003年作品 MIRAMAX シネマスコープ 113分
製作 ローレンス・ベンダー
監督 クエンティン・タランティーノ
出演 ユマ・サーマン ルーシー・リュー ダリル・ハンナ 千葉真一(ソニー千葉)  栗山千明 ヴィヴィカ・A・フォックス 國村隼  ect.

実際。信じがたい話だが、2002年晩秋に突如として現れた予告篇を、それから現在に至るまで何度も見直し、「キル・ビル」への期待度は一層高まっていた。本当に一年は長かった。これだけ待ちこがれた映画はそうはないだろう。「マトリックス」や「スターウォーズ」シリーズも結構待ちこがれる映画なのだが、今回はまるっきりの新作で続篇でもなんでもない。それでも、自分がこの映画に寄せる期待感は巨大なものだった。しかし、自分のようなタランティーノの新作に必要以上の期待を寄せているファンは世界中にいるのだ。例えば、アメリカの大学で映画の勉強をしている学生が作ったオマージュとも言える予告篇のパロディ「Kill Phil」などが良い例である。これは、つい最近に『映画秘宝』で紹介されていたものだが、ことごとく低予算ながらツボを押さえた作品になっている。もちろん本来ならばヤバい事をしているのだろうが、タランティーノと同じ人種であろう彼のリスペクト度合いが重々伝わってくるのでタランティーノにも大目に見られているのだろう。
さて、時間とは矢の様に過ぎて行くようで、あっという間に一年が経ち、10月25日がやってきた(先ほどは一年は長かったと言いながらも…)
期待大の映画は最高のシアターで観る!主義の自分なので、首都圏内で最高だと信じる海老名のヴァージンシネマズ海老名(現TOHOシネマズ海老名)の1番シアターのL列を確保した(座席数630・スクリーンサイズ縦8.1m横19.4m国内最大級)。事前の予習もほぼ万全(タランティーノ過去作品を見直したのと、ブルース・リー関係映画の復習)で、雰囲気を盛り上げるために黄色のロングスリーブシャツと買ったばかりのオニツカタイガーの黄色ベースのシューズを身に付け、いつもの通りに黄色の愛車PUNTOで会場に乗り付けた(黄色尽くしだ)。

 
さて、本編であるがその前にまず右の"PUSSY WAGON"というロゴを見てもらいたい。これは、映画に登場する黄色い(これも黄色か♪)改造ピックアップの名前で車体の後ろにでかでかと書いてある。この英語    
の意味は、日本語だと「やりまんカー」(やれやれ)という事になるか?実はこの書体そのものがこの映画を象徴しているのである。それはまさに、「安っぽいポップさ」なのだが、他の作品で言えば「オースチン・パワーズ」シリーズのチープ&ポップな雰囲気である。しかし、「キル・ビル」はハリウッド映画でもアメリカ映画でも無い。あくまでも「タランティーノ色の濃い」映画なので、全体的にはグロである。ただ、ポール・ヴァーホーベンの様にすぐに「エロティシズム」には走らないのが良いかもしれない。エロ&グロ&ナンセンスが全てそろっていると反って普通過ぎて面白くないからだ。
ちょっと長くなりそうなので、強引だがvolume 2に続く事にする(まだ批評も書けてないのに〜)*
 
 
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