2004年6月24日執筆
コーエン兄弟の作品の特徴は?と言えばブラック・コメディであること。それから、地域色を必要以上に強調させて、登場人物はいたって平凡な市民である場合が多い。
しかし、そんな登場人物達の歯車が、わずかな出来事によってとんでもない方向に狂ってしまうのだ。【ファーゴ】の女性警察官や【バートン・フィンク】のシナリオ・ライター、さらには【レディ・キラーズ】の自称天才大泥棒に至るまで、彼等は自分達の予想しない結末に向う事の成り行きを、全く制御出来なくなってゆく。コーエン兄弟はそんな、ある意味不幸への階段を登ってしまった人物達の模様を、残酷なまでに冷淡かつ笑いの対象として、観客へのもとなしとして提供し、楽しませてくれるのだ。
そんなシニカルな、彼等の作品に無くては成らないものは、二つあるだろう。まずは、良質な脚本である。【ファーゴ】でもそうだが、【オー・ブラザー】でも、登場人物のセリフに無駄が一切感じられない。注目する点として、とにかく人物をしゃべらせるだけしゃべらせ、隙間を埋め尽くす方法、映画に無駄な瞬間をなくしてしまう、ある意味押しの強い脚本で映画を面白く仕上げるタランティーノ監督作品と、全く正反対のスタンスで、セリフは少なくて、テンポもゆったりとしながらも、一言も重みや状況設定を濃くすることで決して冗長に感じさせないストーリーで勝負するのが、コーエン兄弟の書く脚本の特徴ではないだろうか?
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