お盆休みも最後の日曜日。この週は何故か寒いわ雨降りが続くわで出掛ける気も起きず、どうせ近所のシネコンは混んでいるのが見え見えなので、自宅シアターでの久しぶりの新作上映をした。ツタヤから借りて来た新作が韓国で大ヒットし、日本でも評判だった『猟奇的な彼女』である。ある人から、何故この映画の批評を書かないのか?と問われ、実は単に観ていなかったからなのだが、それには理由があった。まず、同時期に公開していた「ボイス」を観てがっかりした事。また、DVDにて「火山高」を観て顔面蒼白になった事。実は、これまでの韓国映画で、傑作と評判の映画でさえも、「???」と思った事が多かったので韓国映画が苦手になっていたというのもある。その上にこのチラシの謳い文句である。ちょっと見にくいが『スピルバーグを魅了した韓国歴代No.1ラブストーリー』って、ちょっと80年頃の映画のコピーじゃないのだからと突っ込みを入れたくなる。チョン・ジヒョン演じる主人公は結構可愛いのだがチラシの写真はヒドクナイ?少なくとも『キュート』というキャッチコピーは合っていない…なんて文句も色々有り、気が付いたらもうDVD発売になっていた訳で、でも懇意にしている『チラシ天国…』のymaedaさんはいきなり★を満点付けているし…という事で早速観る事にした。
さて、 観始めてから5分位で早速、「あ。この映画もやっぱりダメかも」モードに突入した。さえない顔の主人公『キョヌ』のモノローグが延々続くのだ。あ〜あ、説明しちゃってるよ〜(汗)

大体において、モノローグで話を進める映画にろくなモノは無いのだ。そして、自分の興味が最大に薄れるシーンがいきなり登場した。主人公の『キョヌ』と彼女の初めての出会いの場で、一番見たくない描写が唐突に出て来た。この映画を観ていない人もいると思うので、この先の面白い要素になると思われる部分はあえて説明しないがここだけはちょっと書かせてもらう。なんせ、このシーンが冒頭にあるおかげで誰にでも勧められる映画と思えなくなっているので…少なくとも、自分はこういう直接的な描写をする映画が大嫌いである。ましてこんなにリアリティに溢れると…(泣)。では、問題のシーンであるが…電車の中で彼女は泥酔状態にある。手すりにかろうじて掴まってはいるがもう倒れそう。そして、最後にはお決まりの『ゲロ〜!』シーン。…ってこんなシーンがお決まりなの、韓国って国は?そんなシーンは、普通日本映画でもアメリカ映画でもよほどのカルトな映画でないと入れないのですが…この映画は確かラブストーリーだったのでは?普通の恋愛映画ではヒロインが嘔吐するシーンを入れるかなあ?!しかも、こんな可愛い女の子が『ゲロゲロ〜』って。このシーンは一応、コメディタッチなので笑えるシーンとして流すらしいのだが、いかんせん日本の感覚で観てると全く常識はずれな程直接的であり、しつこいシーンなのである。せめて間接的なイメージで誤魔化しても良かったのにめちゃめちゃリアルな描写にこちらももらいゲ○しそうになる。これが、お国柄なのだろうか?これも、チラシからは予測不可能である。
それから、唐突に『前半戦』とサブタイトルが出る。続いてまたまたモノローグが続く。その後に続くの二人のやりとりは予告編でも強調されているように、彼女が一方的に男気が強く、相変わらずどうにも頼りない『キョヌ』をまさに猟奇的に扱うのである。『後半戦』に入ると彼女の実家も登場するが、父親の描写がまたわざとらしいコメディタッチで気になって仕方が無い。ここまでで約1時間半経過…もはや、この映画、自分には向かないや!と殆どテキトーに観ていたその時…
突然、シリアスなストーリーが展開され、なぜ彼女がこれまで理解不能な行動をとってきたのか。また二人が今後どうなってゆくのか?を丁寧にしかも観客の感情に訴えるように描写されていくのだ。あたかも、『前半戦』『後半戦』と銘打ったサブタイトルのシーンがお膳立てのように記憶の奥へと消えてゆく。そして、最後にはとても素敵な言葉で締めくくられる。「人は努力したあかつきに偶然を得る」と…。翻訳字幕でこんな風に書いてあるのだが、まさにこれぞと言う素敵なラブストーリーらしい終わり方である。クライマックスのシーンでは男女に関係なくもらい泣きをしてもおかしくないだろう。ほんの少し少女漫画チックなご都合主義の話だが、結果的に恋愛映画としては名作に値する作品だった。ただ、何度も観るかな?と自問すると、やはり冒頭の『ゲロ〜』シーンは観たくないのでちょっと考えるし、人にも簡単に薦めることは出来ないなと思った。

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