そのクルマは今日も停まっていた。ジョン・トラボルタ主演の傑作アクション映画「ソード・フィッシュ」にて手に汗にぎるカーチェイスを披露し、更にはこの夏の「西武警察」でも登場するイギリスTVR社のタスカン(車体価格810万円)である。色はグラデーションのかかった様なパープルとモスグリーンの見る角度で変化する不思議なメタリック。特徴的なのがヘッドライトで、そのフェイスは一度見たら忘れない。そんな名車がまた今日も某駐車場に停まっていた。その日は、いつも以上に名車を見かける事が多かった。朝には、スーパーカー時代のとりわけ、ランボルギーニ・カウンタックLP400と肩を並べるほどの名車であったフェラーリ512BBが実際に動いている姿を信号でまじまじと観察出来た。これだけで満足だったのだが、夜になって先日初めて見たタスカンに今日も出会えるとは…なんて自分はついているのだろう。そこで、人目を気にしながら早速携帯カメラで写真を撮った。しかし…その時、初めて気が付いたのである。そう、いつもなら当たり前の様にナンバープレートは後処理でぼかすのだが、今回はそれが出来なかったのだ。ストロボの焚けないちゃちなカメラの解像度を更に小さくしてアップしている割には、意外ときちんと読めると思うが(一部ぼかしを入れた)番号が"666"なのである。"666"と言えば、映画「オーメン」である。英語で、オーメン (omen)という言葉は、『予兆・しかも悪い予感とか予兆』とか言う意味をなす。ちょうど、先週「デッド・コースター」という『虫の知らせ』をテーマにしたオカルト映画を見たばかりで、特に主人公達の言葉で、"Omen"を実際耳にしてきたばかり。このクルマの原産国イギリスでは、666をナンバープレートにする人なんて一人もいない。宗教感が生活に密着しているせいなのだろうが、忌み嫌う番号は徹底的に排除しているのだ。日本でもそんなきらいは少しあるが (4や42が死を連想する)、それでも"13"にも疎いし、ましてや"666"には映画で少し知っている程度で、特に気にしていないのが現状だ。このクルマの持ち主は、果たしてナンバープレートの事をどのくらい熟知しているのだろう。まさか自分から申請してこの番号を取ったとなれば、それは何ゆえに?余計な詮索や想像は果てしなく続き、結論として、この番号を見た自分が何か不吉な事が起らないか、その時以降のクルマの運転をはじめとして、とにかく用心をした。その結果、今日も無事に生きている。小説のような話だが、もしかしたらこれで、本来の自分にふりかかる(はずだった)不幸を自分で回避出来ていたら良いのだが…夏休み直前のちょっと怖い話になってしまった。

 
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