キューッとなる本 (ブックレビュー)
Date: 2006/9/13
大切な出会いや思い出、「好き」を感じる要素がたっぷり詰まっていて、「手の届く場所に、ずっと置いておきたい」、そんなふうに思う本がいくつかあります。
今回ご紹介するのは、ちょっと個人的なくくりですが、心を温めほぐしてくれる、私にとって「1杯のホットミルク」のような本。自分のこどものころ、家族のあたたかさ、友達のやさしさが感じられ、心がキューーっとなって、「ああかわいいなあ」「愛おしいなあ」と、たまらなくなってしまう本たちです。
『ことばのべんきょう くまちゃんのいちにち』
かこさとし(福音館書店)
1つ1つの絵に、ひらがなかカタカナで名前が書いてあり、こどもが単語を覚えられるようになっている絵本です。このボロボロになってしまった1冊は、実は私が2歳頃からくり返し読んできたもの。細かく愛嬌たっぷりな絵が大好きで、毎日飽きることなく楽しんでいました。本を読むことのワクワクを、私がいちばん最初に感じたのは、この本だと思います。それ以来、かこ先生の大ファンに。編集者になって、先生にお目にかかり、本の表紙にサインまでいただいたときは、涙が出ました。2歳の自分と大人になった自分とが、一緒によろこんでいるように感じられたのです。ポップな表紙も最高です☆
『ぶたぶたくんのおかいもの』
土方久功(福音館書店)
お母さんにお買い物を頼まれたぶたぶたくんが、はじめて1人でおつかいに行くお話です。ぶたぶたくんの愛らしい姿を見た瞬間、心が撃ち抜かれました。たくさんの友達に出会いながら買い物をしていくほのぼの感に、超シュール&ナンセンスな展開が加わり、ページをめくるたびドキドキ驚かされます。絵も文章も構成も、どこの誰とも似ていない、強烈なオリジナリティーを感じます。この絵本は、ぜひ声に出し読んでいただきたい。こどもと一緒に読んで楽しいのはもちろん、大人だって愉快な気持ちになれちゃいます。(私も1人で読んでは笑ってます…!)読むほどに、「ぶたぶたくんワールド」のとりこになること必至。暗い気分なんて吹っ飛んじゃう、自由で大らかな空気の流れている、チャーミングな絵本です。
『ぼくにげちゃうよ』
マーガレット・W・ブラウン・文/クレメント・ハード・絵/いわたみみ・訳(ほるぷ出版)
好奇心の出てきたこうさぎが、母うさぎに『ぼくにげちゃうよ』と一言。『おまえがにげたら、かあさんはおいかけますよ。だって、おまえはとってもかわいい わたしのぼうやだもの』。こうやって、母と子の想像上の追いかけっこがはじまります。こどもが「ぼくは魚になって小川に逃げるよ」と言えば、お母さんが「お母さんは漁師になって、おまえをつかまえますよ」と返す。こどもがどこへ行こうと、惜しみない愛情で受け止める姿は、純粋に「母親ってすごい」と温かい気持ちになります。いろいろなコスプレ(?)姿のお母さんが、美しい絵で描かれているのも、どこかおかしくて素敵です。
『チキンスープ・ライスいり』
モーリス・センダック・作/じんぐうてるお・訳(冨山房)
「チキンスープ・ライスいり」がいかにおいしく、素晴らしいか!ということが、歌のようなリズムでつづられた絵本です。1月から12月まで季節の情景に合わせて、こどもの目線から「チキンスープ・ライスいり」を楽しみにしている気持ちをつづっています。例えるなら、「1月は正月で酒が飲めるぞー 酒が飲める飲めるぞー(以下略)」でお馴染みの、『日本全国酒飲み音頭』の外国こども版(わかりにくい?)。いつか私にこどもができたら、曲をつけて一緒に歌ってみたい…とひそかに思っています。表紙の男の子の、軽く「おじさん」が入ってる風貌が、なんとも愛らしく私好み。
『しんせつなともだち』
方軼羣・作/君島久子・訳/村山知義・画(福音館書店)
「友達ってなに?」という質問に、私がすぐに思い浮かべる答えは、この絵本です。相手を思いやる気持ちと、求めるのではなく与える愛の温かさを、幼稚園の頃の私に教えてくれた1冊です。決して説教くさいわけではなく、最後まで淡々と描かれています。村山知義氏の強く美しい絵は、物語に静かな余韻を与えていて、この本を読むと、大切な友達への日頃の感謝が浮かんできます。今も昔も、ゆるがない軸のように、私を支える1冊です。
『The Road that Lost its Way』
W.H.Wood (Thomas Nelson and Sons Ltd)/絶版
タイトルを直訳すると、『道に迷った道』。主人公は「道」。道が道に迷ってどうする…! シュールな内容、道くんの真面目な表情&リアルな腕、背後にいる「橋くん」の昆虫のような姿&恐ろしい目つき、乙女好みなウサギ、全体的に漂う呑気さ。どこをとってもキューーっです。この本は、親友のイギリス土産。なんて私の好みを熟知しているんだ…と、感激したのを覚えています。「かわいくておかしくて、どこまでも平和」。私が惹かれて止まない、自分の作品でも表現したいと願うテーマです。
前のコラムへ